ここではSUTER スータースリッパークラッチのメカニズム、及びセッティングについて解説いたします。
メカニズムを理解することで、よりコースや自分に合わせたセッティングが可能になることでしょう。
SUTER スータースリッパークラッチのメカニズム
SUTER スータースリッパークラッチは、シフトダウン時など強大なバックトルク(エンジンブレーキ)が掛かった際に機能するクラッチです。
- エンジンブレーキトルクが掛かると、ハブキャリアを回転させる力が発生します。この力が発生することで傾斜路(ランプインサート)に設置されたボールが動きリリースリングを押し上げます。
- BTL(バックトルクリミッター)スプリングはリリースリングを押し上げる力に対して作用します。このスプリングがバックトルクの解放ポイントを設定しています。
- リリースリングが設定された隙間を超え、ボルトに直接押し付けられるとプレッシャープレートも一緒に浮き上がり半クラッチ状態を作り出します。
力の流れ
エンジンバックトルク → ハブキャリア → ボール → リリースリング → ディスタンスボルト → プレッシャープレート



SUTER スータースリッパークラッチのセッティング
クラッチの挙動は3つのパラメータによって変更可能です。
• BTL(バックトルクリミッター)スプリングの強さ
①ディスタンスボルトとリリースリングの隙間
• 傾斜角度 (ランプインサート) *
* 一部のモデルを除く
1. BTL(バックトルクリミッター)スプリングの強さ
BTLスプリングを強くする=エンジンブレーキが強くなる(スリッパーの効きが弱くなる)
BTLスプリングを弱くする=エンジンブレーキが強くなる(スリッパーの効きが強くなる)
といった特性になっています。
エンジンブレーキを積極的に使用したい場合は「BTLスプリングを強く」、
よりスムーズなエンジンブレーキ特性にしたい場合は「BTLスプリングを弱く」します。
SUTER スリッパークラッチには一部のキットを除いて、基本セットの1ランクレートの高いものと低いもの、計3枚のBTLスプリングが付属しています。
またオプション品として、150Nmから2100Nmまで概ね100N単位でスプリングがラインナップされています。キットに付属しているスプリングだけでは不十分な場合にお選びください。
2. ディスタンスボルトとリリースリングの隙間(ギャップ)
リリースリングとディスタンスボルトにはSUTERが指定した隙間(ギャップ)がありますが(車種により異なります)、ここの隙間(ギャップ)を調整することでスリッパーの効き出すタイミングを変更可能です。
隙間(ギャップ)を広くする=スリッパーの効き出しが遅くなる
隙間(ギャップ)を狭くする=スリッパーの効き出しが速くなる
スリッパーがアクセルを戻した直後から効いて欲しいのか、シフトダウンをしてから効いて欲しいのか。などスプリングと合わせてライダーの好みに合わせることが可能です。
オプションとして厚さの違うワッシャーや長さの違うボルトがラインナップされています。
ギャップのセッティング方法についてはこちらのpdfドキュメントを参照してください。
3. ボールランプの傾斜角度
実際の使用時
この SUTER スータースリッパークラッチ の出荷時設定は様々なテストを通じて設定されました。
そのためにまずはそのまま乗ってもらうことをお勧めしています。
その後、乗り方や好みに合わせてまずはBTL(バックトルクリミッター)スプリングを変更してください。
多くのお客様はここまでで満足されています。
より繊細なセッティングを必要とされる方は、ギャップセッティングやボールランプの変更をお試しいただければと思います。